今宵、ロマンチスト達ここに集いて




『………お父さん?』


ひっそりとした、日曜日の病院で、わたしはただただ呆然として、両親に呼びかけるしかできなかった。



『お母さん………?』


今日はわたしがデートだから、お母さんもお父さんとドライブデートしてくるわね、なんてはしゃいでたのは、ほんの数時間前のことだ。

母はお気に入りだというブラウスを選んで、父は母に似合ってると褒められたらしいポロシャツを着て、二人して上機嫌で、彬くんと入れ替わるようにして玄関を出ていった。
あんなに、元気だったのに。ピンピンしていて、健康そのもので……というより、普通だったのに。
普通の日常が、そこにあったのに。

何も不吉な予感なんかなかったし、なんなら母は今朝の星占いでは一位だった。
なのに、いつもと変わらない日常が、こんなにもあっけなく覆ってしまうの………?



まったく、意味がわからない。


でもわたしの父と母が、真っ白いシーツのベッドに横たえられていて、二人とも、うんともすんとも言わず、いくら呼んでも、二度とわたしに返事をくれることはなかった。
それが現実で、事実だった。



『……お母さん?……お父さん!もうやめてよ。なんでよ、なに寝てるのよ。二人ともいい加減にしてよ。今夜は彬くんも一緒に晩ご飯食べるからって、お母さん、ちらし寿司作るんだって張り切ってたじゃない。お父さんも、彬くんに将棋教える約束してたんでしょ?なにやってんのよ』


ちっとも現実味を感じられてなかったわたしは、横になったまま起きない両親に苛立ちすら覚えて、声を荒げた。

声だけじゃなく、手も出てしまい、その行為が乱暴になってくると、隣にいた彬くんにぎゅっと抱きしめられた。









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