今宵、ロマンチスト達ここに集いて
部屋の中に、ひたひたと静寂が忍んでくる。
それは決して心地良いものではなくて。
苦しく、重たく、じっとりとした暗い闇夜のようだった。
『千代には、不可解に聞こえるかもしれない。でも……事実なんだ』
『まだ言うの?だったら、ちゃんと説明してよ』
『もちろん、そのつもりだ。でも、まずは………ちょっと、昔話をしようか』
『は?昔話?』
何言ってるの?
そう責め立てるつもりが、振り返って彬くんに向き合った途端、言葉が萎んでしまった。
否応なしに目に映ったその面差しは、やはりどう見ても冗談を言えるようなものではなく、真剣過ぎるほどに真剣そのものだったのだから。
『とにかく、座ってくれないか?』
彬くんはわたしをベッドに促す。
『ごめん。俺も、どう言ったら千代に理解してもらえるのか分からなくて、説明する順番を間違えたのかもしれない。でも一からちゃんと説明するから、だから千代もちゃんと聞いてほしい』
布団をめくり、枕を整え、わたしの居場所を作る彬くんに、わたしの中の乱れた波も、おさまることはないにしても、その押し寄せる間隔はわずかばかりに広がったような気がした。
『……わかった』
わたしの了承と、彬くんのスゥ…と息を吸う音が、張り詰めた空気の中でぴったりと重なったのだった。