今宵、ロマンチスト達ここに集いて
あのとき ”中学生” と言ったのはあくまでも彬くんの叔父さんから見た印象でしかないはずだ。
でも中学生でも高校生でも大した差異はない。
だってわたしは小学校入学前の幼児で、彬くんも然りなのだから。
枕に軽く腰をあてて座っていたわたしは、若干前のめりになりつつ、彬くんを睨んでしまった。
『中学生でも高校生でもどうでもよくない?わたしが幼稚園の頃に彬くんが高校生なんておかし過ぎるでしょ』
言外に嘲笑めいたものが含まれてしまうのは止められなかった。
それほどにあり得ないことを、彬くんは真面目に発言しているのだ。
ところが彬くんは、『千代、忘れてないか?』と、まるでわたしに責任の一端があるかのような問いかけをしてきたのだ。
『何を?』
『あのとき千代を助けた人の手首にあったほくろのこと。そして高校で出会った俺の手首にもほくろがあったことを』
『―――は……?』
またしても一音反応になってしまったが、今回のそれは、明らかに今までとは異なる音だった。
それは、そんなまさか…と、信じられるはずのない事を目にした時に起こる、自身の信念が揺れる音だったのだ。
ちょっと待って。
あのときわたしを助けてくれた人と彬くん、二人が同じ場所にほくろがあることは最初から分かっていたことだ。
それを今さら議論のテーブルに乗せるなんて、まったく意味がないはずなのに。
でもあえてそれを訴える彬くんの、その言い方は、まるで………
『つまり、あのとき階段から落ちそうになった千代を助けたのは、高校生の俺だったんだよ』
わたしの混乱をさらにかき混ぜるように、彬くんはまっすぐに告げたのだった。