冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
私がトイレにいるとここぞとばかりに叔母様達が詰め寄ってきた。

「あなたが響と結婚したせいでせっかくのまとまりかけていた縁談が破談になったのよ。全く、どのツラ下げてここにきてるのかしら。」

「あなた知ってたのよね?誠の結婚相手が響でもいいって言ってくれてたことを。それなのによく横入りできたものね。」

「何も言えないわよねぇ。でもお陰で副社長夫人だなんていい暮らしが出来てるんですものね。」

3人で寄ってたかって私に文句を言ってくる。

「皆さんは私にどうして欲しいのでしょうか。」

私が口を開くと、
「すぐに別れなさいよ。今ならまだ間に合うかも知れないわ。」

「私と別れたら相手は結婚してくれるのでしょうか。バツのついている響さんと。」

「そんなことは関係ないわ。そもそもあなたが結婚しなければこんなことにならなかったってことを言ってるの。相手の会社に迷惑をかけて…。柳瀬さんの会社が潰れたら全てあなたのせいよ。」

「柳瀬さんには援助を申し出たと伺っています。」

「あなたの口からそんなこと聞きたくないわ。本当に面の皮が厚い女ね。」

「すみません。面の皮が厚くて。皆さんもお化粧で厚そうですね。じゃ、失礼します。」

私は言うだけ言って即座にその場を離れた。

そそくさと広間に戻った。

よし、言ってやったわ!私は手をぐっと握りしめほくそ笑んでしまった。

響さんがわたしを見て不思議そうな顔をする。

「何かあった?」

「えぇ、ちょっと…。」
 
「大丈夫?」

「もちろんです。スッキリしましたから。」

不思議そうな顔をする響さんに私は微笑み返した。

申し訳ないけど泣き寝入りしないわよ。
あと数ヵ月の嫁だからこそどんなに周りに恨まれても疎まれても大丈夫。

こんなことなら手土産に泥団子詰めればよかったわ。

「さぁ、そろそろ帰りませんか?ご飯もいただいたことですし。」

「そうだな。」

私たちは立ち上がるが誰も見向きもしない。

家政婦の幸さんだけが追いかけてきてくれた。

「申し訳ありません。お見送りが私だけで…。」

「幸さんがきてくれて嬉しいよ。幸さんは元気でいてくれ。」

「ありがとうございます…。」

私は余っていた手土産を響さんに渡す。
響さんも理解したようでそれを幸さんへ渡した。

「頂けないです。」

「いいんだよ。幸さんだけが喜んで食べてくれるだろうから。他の人は食べてくれるかわからないしね。それじゃあ玲奈が報われないからさ。」

「奥様、ありがとうございます。」

「こちらこそ受け取ってくれてありがとうございます。」

最後の最後でなんだか温かい気持ちになり帰宅することができた。
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