冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~

契約違反

このところ千波の出版社がとても忙しいらしい。

それに伴い私にも仕事を回してくる量が増えた。

正直キツイかも、と思った。

でも翻訳の仕事は楽しいし、仕事を回してくれる千波の役に立ちたいとも思う。
千波のお陰で私の今の生活があるんだもん。
仕事がもらえなかったら毎日図書館に行くだけの1年だった。
こんなに楽しい世界があると教えてくれたことに感謝してる。
だから頑張りたいと思った。

最近響さんを送り出すと急いで家事を済ませ、翻訳の仕事に取りかかる。
昼ごはんを食べることも忘れ集中してしまい、気がつくと夕方…。
慌てて買い物へ行き、夕飯を作り、洗濯をたたみ、アイロンをかけ…
夕食を食べるとお風呂に入り早めに自室へ引きあげる。

1時くらいまで翻訳の続きをして、寝て、また5時半に起きて朝食作って、家事して…

土日、響さんがいる時間は翻訳ができないため
どうしても夜中にやることが多くなってしまう。

こんな生活が2週間続いた。
やっとひと段落し、目処が立った。
千波にも『ごめんね』と何度も謝りのメールが来ていた。
仕事をもらっているのは私の方。
こちらこそありがたいと感謝しなければならないのに千波に気を遣わせていることに申し訳なく思う。
多分私の意思を尊重して仕事量を今までセーブしていてくれたんだろう。それがどうにもならず頼んできているのだと思った。
もっとやりたい、と正直思ったけれど契約は契約。響さんとの契約を蔑ろにしてはいけない。響さんへの感謝を忘れてはならない。

ただ…この2週間の疲れが蓄積されてきており今朝からどことなく体が重い。頭がぼーっとしている。今日は仕事も落ち着いたし家事をしたら少し横にならせてもらおう、そう思っていたら響さんから電話がきた。

『玲奈、悪いんだけど俺の書斎の上に白い封筒置いてある?中を覗いてもらうと航空関係の貨物取引とかのものなんだけど。』

『見てきます。ちょっと待ってください。』


『あ、あります!よくわからないけれど航空会社の名前が表紙にあります。』

『それ!今日お昼のランチミーティングで使うんだ。悪いんだけどタクシーに乗って届けてくれないかな?下で米山に受け取ってもらうようにするからさ。』

『分かりました!すぐ支度して出ますね。』

『悪いけど頼むよ。』

私は電話を切るとすぐに化粧をして家を飛び出した。

下でコンシェルジュがすでにタクシーをスタンバイしていてくれ、私は乗り込むと弓川コーポレーションと行き先を告げた。

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