冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
しばらくすると玲奈はストレッチャーに乗り、点滴をぶら下げて出てきた。

病室は個室を頼んだので他に患者さんはいない。

玲奈は泣きながら謝ってきた。

「響さん、迷惑かけてごめんなさい。」

「何言ってるんだ。こんなになるまで病院に行かずにいて…辛かっただろう。」

「身の置き所がなくてどうしたらいいのかわからなかったんです。でも、まさか妊娠していたなんて…。」

「あぁ。驚いたよ。でもすごく嬉しいよ。ここに俺たちの子がいるんだろ。心臓が動いてるって先生が言ってたんだ。けど…」

俺が言い淀んでいると玲奈が、
「私も見ました。心臓が動いているし赤ちゃんの形になっているところも。ただ、無理し続けていたので出血があり流産しそうだと言われました。このまま絶対安静だそうです。私が早く赤ちゃんに気がついてあげられなかったから赤ちゃんを苦しませてしまったんです。」

「玲奈、大丈夫だ。ここにいるんだ。これから2人で応援してやろう。頑張れって。」

俺は布団の中に手を入れ、玲奈のお腹に触れた。
この2週間で痩せてしまった玲奈の体はお腹もぺたんこで赤ちゃんがいるようには思えない。
でもこの中でまさに生きようと頑張っていると思うと胸が締め付けられる。

ポロっと涙が1つ流れ落ちた。

「響さん……」

「ごめん。ここで頑張ってると思うな…。ちょっと感慨深くて。」

「私もこの子を守るように頑張ります。」

力強い言葉に、俺はお腹に手を当てたまま玲奈にキスをした。

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