冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~
朝、電話をもらってから3時間。
俺は北海道の地にいた。

「響さん?早い…驚きました!」

「弓川くん、早かったな。」

「はい。あのあと急いできました。出産には絶対に立ち会うと約束ですから。」

「ありがとう。」

玲奈は時々顔をしかめながらもまだ間隔が開いているらしく話ができたが、俺が到着して3時間経つといよいよずっといたいのか唸るようになってきた。
助産師さんが8センチまで進みましたね。
そろそろ分娩室へ移動しましょうという声に待ってましたとばかりだった。

玲奈はずっと苦しそうな表情を浮かべ汗を浮かべている。
俺は汗を拭き、水分を飲ませ、腰をさすり続けた。
こんなに痛いのかと玲奈が不憫でならない。
それなのにどんどん痛みが増してきているようで普段は言わないような泣き言さえいうようになってきた。

「響さん、痛い!痛いよぉ。」

「うん、玲奈は頑張ってる。赤ちゃんも頑張ってる。あと少しだ。頑張れ!」
そう言い腰をさする。

「もっと押して。もっと強く。」

「わかった。」
俺はグイグイと押すが玲奈はもっとと言う。
俺の手は真っ赤になり、汗が吹いてきた。
でも玲奈はもっと辛い。
俺はここで逃げるわけにはいかない。

分娩室へ移動するときも一度では移動できない。
陣痛の合間で移動しようと思うがすぐに次の波が来る。

「玲奈、次楽になったらまた進もう。」

「う…ん。」

「いいところで言って。」

「今少しいい。」

「よし」

俺は玲奈の手を持ち、腰を支えながら廊下を歩く。
こんなに辛いのに歩かないといけないのか、と思うが口には出せない。
ひたすら玲奈を励まし、歩くのを手伝った。
分娩室のドアが見えてきたがここでまた波が来た。

「いたーい!あぁ…うーん…。響さん、痛い。痛いの!もう嫌。」

「玲奈。もう少しだよ。玲奈は頑張ってるよ。あと少しで赤ちゃんに会えるからな。」

玲奈は汗の中、涙まで流している。
俺はタオルで顔や首元を拭き腰を押す。

また少し和らいだようで急いで分娩室へ行き、台に乗った。

モニターがつけられるとドクドクと心音が聞こえる。
玲奈が痛むと心音が落ちる。

そのため合間で赤ちゃんにしっかり酸素を送るよう息を吸うよう言われるが玲奈はそれどころではない。

「玲奈、落ち着いて。ゆっくり呼吸するんだ。鼻から吸って。」

俺は玲奈の手を握りながら声をかける。
俺の想像を超える玲奈の痛みに目を背けたくなるが一番辛いのは玲奈と赤ちゃんだ。
俺が逃げるわけにはいかない。
玲奈を見届けてあげなければ…
赤ちゃんを玲奈と一緒に迎えてあげたい…
ただその一心で励まし続けた。
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