遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる
和花がお手洗いに立ち扉を開けると、同じフロアの別部門で働く富田なぎさが鏡越しに和花に手を振った。

「お疲れ、和花ちゃん」

「お疲れ様です、なぎささん」

生産管理部門の庶務をしているなぎさは庶務の先輩でありとても面倒見がよく社交的なタイプだ。年齢も比較的近いこともあり、入社時から庶務の仕事についてよく相談をするうちに仲良くなった。

和花がなぎさを慕うようになぎさも和花のことを妹のように可愛がっており、プライベートで食事に行ったり飲みに行ったりする仲だ。だから和花のトラウマについても少しは知っている。

「最近仕事どう?大変?」

「うーん、あっ、今度チーム長が変わるんです。だから手続きの仕方教えてほしいです」

「そうなの?手続き大変だよー。やることいっぱい」

なぎさは大げさに顔をしかめ大変さをアピールする。和花はやっぱり、と苦笑いをした。

「今のチーム長とてもやりやすかったから、何だか残念です」

「和花ちゃんのとこのチーム長優しいもんね!次は誰が来るの?」

「佐伯さんて方です」

「佐伯さんてもしかしてあの佐伯くん?」

「なぎささん知ってる方ですか?」

「エリートの佐伯くんのことじゃない?」

「あっそうです!国立大首席卒でTOEICがどうのこうのって、チーム長が自分のことのように自慢していました」

「えーいいなぁ。うちのチーム長と変えてよー」

なぎさは自分の所属する生産管理部門のハゲ親父チーム長を思い浮かべ大げさにため息をつく。和花のチーム長である林部は温厚な印象であるのに対して、なぎさのチーム長は頑固な印象でまかり通っているからだ。

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