全ては、お前の為
「紅零~そこ……んぁぁ、そこぉ…あぁ…も…だめぇ……」
「………」
あるホテルの一室。
男と女が抱き合っている。
男の背中の鬼が睨んでいる。
ベットのスプリングが軋み、女の甘い声だけが響いていた。

その男・黒滝 紅零。
無言でベットから下り下着だけはいて、側あるソファに座る。
煙草を取り出し、吸い出した。
外からの月明かりが差し込み、紅零の耳のピアスに反射してとても綺麗に光っている。
「紅零って、いつから煙草吸ってんの?」
「16」
「未成年のくせに~(笑)」
「その未成年に抱いて~って連絡してきた、女は誰だよ……!?」
「だってぇ~旦那が相手してくれないんだもん!
それに、身体の相性は紅零が一番!
………あ、紅零もうすぐ、未成年じゃなくなる。
3、2…1!
誕生日おめでとう~!」

「フフ…やっと、大人になれた……!」
思わず、笑みが溢れる紅零。
「あ…初めて見た…」
「は?」
「紅零のそんな笑顔」
「あのさ」
「んー?」
「もう二度と、俺に連絡してくんなよ!」
「は?紅零、何言ってるの?」
「スマホのメモリー消しとけよ!
まぁ…番号変えるけどな!」
そう言うと、服を着だした紅零。

「あ、一つ教えておいてやる!」
部屋を出る寸前。
「何よ…」
「お前の旦那…他に女いるみたいだよ。
もうすぐ離婚を突きつけられんじゃね?」
「え?」
「せっかくのセレブ生活も終わりだな。御愁傷様」
「ちょっ…だったら紅零、私と一緒になろ?」
「は?だれがお前みたいな汚い雌……
それに俺が愛する女は、生涯でたった一人だ」
「まさか、本気なの?前に話してた…」

「あぁ…やっと、雨音に逢える」
そう言うと、部屋を出ていったのだった。

「汚いのは、アンタの方でしょ………」
紅零が部屋を出ていった後、女の呟きが響いたのだった。
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