全ては、お前の為
そして紅零は、ホテルのエントランスに出た。
一台の高級車が止まっていた。

「紅零様、お待ちしておりました」
「うん」
男がドアを開けてくれ、紅零は車に乗り込んだ。

「誕生日おめでとうございます。
これ、ボスからのプレゼントです」
大きな封筒を渡された。
「あーサンキュ」
その中には、雨音の情報が事細かに書いてある書類が入っている。
あともう一つ━━━━大切な書類が入っている。


フワッと微笑み、その書類を見つめる紅零。

「………少し、安心しました」
「は?」
バックミラー越しに話す運転手の男。

「紅零様は狂った悪魔ですからね。
五年前に初めて会ってからずっと笑顔なんて見たことがなかったので、そんな状態ではお姉さんに会っても、怖がられるのではないかと心配してたんですよ」
「姉ちゃんじゃねぇよ!」
「あ、そうでしたね」
そして、あるタワマンの前に止まる。

再度運転手がドアを開け、外に出た紅零。
そのままマンション内に入っていった。

オートロックを開け、最上階に上がる。
最上階は、入居者専用のバーになっている。

店内には今日は誰もいない。
そこの一番奧の大きなソファに座っている男。
裏の世界の神だと言われている男で、名前は如月 露鬼。
「露鬼」
「ハッピーバースデー!」
「ありがと。あと、これも!」
書類の入った封筒を軽く上げた。

「ん。
まぁ…僕は紅零くんが仲間でいてくれるなら、何でもしてあげるよ?」
「うん」

「雨音ちゃんと幸せになるんだよ!」
フワッと微笑む、露鬼。
< 3 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop