堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。

「――それと、もうひとつ」

前任の騎士たちを憐れむマリアベルをよそに、レオンハルトはジークウェルトへ耳打ちを始めた。

こそこそと何やら話している。突然静かになったものだからマリアベルの意識が現実に戻った。
何を話しているのか小声でマリアベルには聞こえない。だが表情を見るに少し深刻そうであった。

ジークウェルトも初めは拗ねたようなした顔をしていたが、だんだんと真剣な表情になる。
そしてひと通り話を聞き終えると、納得したのか少し笑みを浮かべて小さく頷いていた。

「……そういうことね」

「ああ。むしろいいタイミングでこの話が舞い込んできたと思った。私個人としては今話した内容のほうが重要事項だな」

「まったくアンタはどこまでシスコンなのかしら?」

「なんとでも言ってくれ。俺は妹が一番可愛い」

どうしてそんな会話になったのか分からないが、いきなり溺愛っぷりを発揮させるレオンハルトに、マリアベルは恥ずかしくなって赤面した。

ジークウェルトはマリアベルに視線を移す。

ばちりと目が合う。
美麗な顔に見つめられて、思わずドキリとした。

「マリアベル・アステリア。アナタを専属騎士として認めます。……これからよろしくね、マリーちゃん」

ジークウェルトはにこりと柔らかな笑みを浮かべ、マリアベルに告げた。
どうやら受け入れられたらしい。複雑な気分ではあるが少しだけホッとして、マリアベルは敬礼の姿勢を作った。

「こ、こちらこそよろしくお願いいたします、師団長!」

「んもう、堅苦しい呼び方は嫌いなの。ジークと呼んでくれる?」

「は、はっ!ではジーク様と」

「うん、よろしい」

< 13 / 57 >

この作品をシェア

pagetop