堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
「――それと、もうひとつ」
前任の騎士たちを憐れむマリアベルをよそに、レオンハルトはジークウェルトへ耳打ちを始めた。
こそこそと何やら話している。突然静かになったものだからマリアベルの意識が現実に戻った。
何を話しているのか小声でマリアベルには聞こえない。だが表情を見るに少し深刻そうであった。
ジークウェルトも初めは拗ねたようなした顔をしていたが、だんだんと真剣な表情になる。
そしてひと通り話を聞き終えると、納得したのか少し笑みを浮かべて小さく頷いていた。
「……そういうことね」
「ああ。むしろいいタイミングでこの話が舞い込んできたと思った。私個人としては今話した内容のほうが重要事項だな」
「まったくアンタはどこまでシスコンなのかしら?」
「なんとでも言ってくれ。俺は妹が一番可愛い」
どうしてそんな会話になったのか分からないが、いきなり溺愛っぷりを発揮させるレオンハルトに、マリアベルは恥ずかしくなって赤面した。
ジークウェルトはマリアベルに視線を移す。
ばちりと目が合う。
美麗な顔に見つめられて、思わずドキリとした。
「マリアベル・アステリア。アナタを専属騎士として認めます。……これからよろしくね、マリーちゃん」
ジークウェルトはにこりと柔らかな笑みを浮かべ、マリアベルに告げた。
どうやら受け入れられたらしい。複雑な気分ではあるが少しだけホッとして、マリアベルは敬礼の姿勢を作った。
「こ、こちらこそよろしくお願いいたします、師団長!」
「んもう、堅苦しい呼び方は嫌いなの。ジークと呼んでくれる?」
「は、はっ!ではジーク様と」
「うん、よろしい」