堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
「……ああ、良いわね。凄く肌が滑らかになったわ」

「さようでございますか」

「どう?この辺りもハリが出てきたでしょう?」

「はあ、そうですね(違いが良く分からないが)」

「んもう!つれない言葉ねえ!!今までの騎士クンは褒めてくれてたのにっ!」


(……この上さらに褒めてたのか。これまでの騎士らは仕事が多すぎる)

いい意味でも悪い意味でもマリアベルは真面目だ。
咄嗟のおだても気の利いた言葉も出てこないのが難点である。


「まあいいわ。さて、今日の予定だけれど」

「はっ」

「午前中はこの部屋で新しい魔術の研究ね。そしてお昼を摂ったら午後は城内での会議があるわ。だから午前中はここで待機。適当に寛いでいて。なんなら隣の寝室で寝ててもいいけど……と言ってもアナタは言葉通りにはしないでしょうけど。で、お昼近くになったら下の階に行って料理を取りに行って頂戴。ああそう、あなたの分も頼んであるから二人分ね」

「私の分もですか?」

「そう。これまでの騎士クンたちはお昼になればすっ飛んでいくように昼食を摂りに出て行っちゃってたけど、マリーちゃんは昼食も摂らずにすっとここで待機してるじゃない?ダメよそれじゃ。お昼はちゃんと食べないとね。腹がすいては戦は出来ぬ、肝心な時に力が出なくなっちゃ騎士としては失格よ」

「そう言われてしまえば……そうですね」

「だから、お昼は一緒に食べましょう。アタシも毎日ひとりで食べてるから、なんか申し訳ないのと味気なくて。誰かと一緒に食べる食事はなんとなく美味しいと思えるもの」

朝と夜の二食が定着していてあまり気にはしていないマリアベルであったが、ジークウェルトにそう言われてしまえば断る理由もない。
マリアベルは素直に頷いた。

「んふふ。ありがとうマリーちゃん。つれないけどそういう素直なところは好きよ」

頭を軽くぽんぽんとされて、微笑まれた。
いつもは女性らしい振る舞いなのに、時折男性の行動も見えるものだから、そのたびマリアベルは取り乱してしまいそうになる。

話さなければ美青年なのだ。
銀髪の貴公子と言われてもおかしくはないほどの。

〝騎士たるもの、常に冷静であれ″

その教えが度々揺るがされる。
日々修行なのだと、マリアベルは思った。

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