騎士のすれ違い求婚
✴︎


「お嬢様〜ティア様〜」

「ここだ」

「そんなところで! 
お二人、何をなさっておられます」

「たった1人の、命より大切な御令嬢に、求婚していたのだ。
今、受け入れていただいた。
皆、祝福してほしい」

「なんと! あたりまえです! 」

「お嬢様〜よかったですね!!!
長年の思いがかなって! 」

木から先に降りたジュシアノールが、下で両腕を広げた。

彼の腕の中に飛び込む。
私の場所。
私だけのジュノ様。

彼の優しい大きな手が腰をささえ、頭を撫で、髪に唇を寄せる。

髪の先まで彼のものだ、と思えることに、心が震えた。

「お嬢様、また泣いておられますよ」

と言ったばあやも泣いていた。


< 29 / 30 >

この作品をシェア

pagetop