託宣が下りました。
カイ様が慌てて弁解を始めます。カイ様のせいではないのに、彼は冷や汗をかいて一生懸命です。
自分のために動いてくれる人がいることのありがたさ。そして申し訳なさ。わたくしはそれ以上笑顔を作ることができず、ただ目を伏せました。
「あ、そうだ。……あの、お姉さん」
ふとカイ様が、おずおずとわたくしに手を差し出しました。
見ると、その手には粉薬のようなものがのっています。
「……これ、どうぞ。リリン草っていう花で作った薬です。心身共に疲労回復に役立ちます」
「リリン草?」
わたくしは声を上げました。ラケシスが驚いて「どうしたの、姉さん」とわたくしを見ます。
「い、いえ。たしかとても希少な花だと聞いていて」
「よくご存じですね、さすが。でも大丈夫です、この薬のリリン草は種を増やすために栽培されたリリン草のほうで、野生じゃありません。安全性と効き目は僕が保証しますから、安心して飲んでください」
「……」
聞けばリリン草の数が少なくなったのは、薬としての効果が高く採取されすぎたためとのこと。
「ゆ――有名なこと、なんですか? リリン草が疲労回復に効くというのは……」
「有名というか……そうですね。ハンターなら知っていると思いますよ。ラケシスさんもご存じでしょう?」
知ってるよとラケシスが肯定します。
わたくしはカイ様のくださった薬をてのひらに載せ、じっと見つめました。
『珍しい花を見てくれ!』
いつぞやそう言って飛び込んできた騎士――。
――疲れているな、と言った、あのときの彼の言葉が胸を巡ります。
そういう……意味だったのでしょうか? 彼はリリン草を、そのつもりでわたくしに……?
(言葉が足らなすぎます、騎士よ)
わたくしは薬を両手に包んで、祈るように額に当てました。顔を隠すようにして。
だからそのときのわたくしの表情は、誰にも気づかれなかったでしょう。きっと。
*
夜のとばりが落ち始めました。そろそろ就寝の時間です。
「見ろ巫女よ、これが手動式のびっくりネズミだ!」
一番早く眠ったほうがいいソラさんは、旅行気分で興奮しているのか、全然寝付く様子がありません。
「手動式?」
ソラさんが抱えているのは、いつもより一回り大きく丸っこいネズミの人形です。それを両のてのひらに包むように持ち、
自分のために動いてくれる人がいることのありがたさ。そして申し訳なさ。わたくしはそれ以上笑顔を作ることができず、ただ目を伏せました。
「あ、そうだ。……あの、お姉さん」
ふとカイ様が、おずおずとわたくしに手を差し出しました。
見ると、その手には粉薬のようなものがのっています。
「……これ、どうぞ。リリン草っていう花で作った薬です。心身共に疲労回復に役立ちます」
「リリン草?」
わたくしは声を上げました。ラケシスが驚いて「どうしたの、姉さん」とわたくしを見ます。
「い、いえ。たしかとても希少な花だと聞いていて」
「よくご存じですね、さすが。でも大丈夫です、この薬のリリン草は種を増やすために栽培されたリリン草のほうで、野生じゃありません。安全性と効き目は僕が保証しますから、安心して飲んでください」
「……」
聞けばリリン草の数が少なくなったのは、薬としての効果が高く採取されすぎたためとのこと。
「ゆ――有名なこと、なんですか? リリン草が疲労回復に効くというのは……」
「有名というか……そうですね。ハンターなら知っていると思いますよ。ラケシスさんもご存じでしょう?」
知ってるよとラケシスが肯定します。
わたくしはカイ様のくださった薬をてのひらに載せ、じっと見つめました。
『珍しい花を見てくれ!』
いつぞやそう言って飛び込んできた騎士――。
――疲れているな、と言った、あのときの彼の言葉が胸を巡ります。
そういう……意味だったのでしょうか? 彼はリリン草を、そのつもりでわたくしに……?
(言葉が足らなすぎます、騎士よ)
わたくしは薬を両手に包んで、祈るように額に当てました。顔を隠すようにして。
だからそのときのわたくしの表情は、誰にも気づかれなかったでしょう。きっと。
*
夜のとばりが落ち始めました。そろそろ就寝の時間です。
「見ろ巫女よ、これが手動式のびっくりネズミだ!」
一番早く眠ったほうがいいソラさんは、旅行気分で興奮しているのか、全然寝付く様子がありません。
「手動式?」
ソラさんが抱えているのは、いつもより一回り大きく丸っこいネズミの人形です。それを両のてのひらに包むように持ち、