託宣が下りました。
「……カイ様。騎士はいつごろ姫に求婚されたのですか?」
わたくしがぽつりと問うと、カイ様は前髪を揺らしました。
「え、ええと。一年前――ですね。僕らが魔王を倒した直後です。王宮が主催してくださった凱旋パーティの際に見初めたそうで」
「――騎士は、なぜ断ったのでしょう?」
王宮に縛られるのが嫌だった? それとも姫と相性が悪いことを分かっていた?
「わがままだったから!」
大声を出したのはソラさんでした。「だってあの姫は偉そうだし、自分に手に入らないものはないと思ってる。そういうの、お兄ちゃんは大嫌い!」
「……でもそれは、ヴァイス様も似たようなものだよね」
ラケシスがぼそりと言うと、「なんだと!」ソラさんはラケシスをにらみました。
「だってそうだろ。ヴァイス様があそこまで姉さんを追い回せるのは、もう姉さんを自分のものだと思っているからだよ。いくら託宣があったからって、異常だ。手に入らないものはないと思ってるとしても驚かない」
「違う! お兄ちゃんは本当に好きなだけ!」
ソラさんがベッドに放置していた人形をわし掴みました。ネズミではなく、いつぞやの藁人形です。わたくしは慌ててソラさんをなだめようとしました。また人形を暴走させられては大変です――。
「大丈夫ソラさん、わたくしはラケシスのようには思っていないから」
「……うー」
「大丈夫。本当に」
……本当に?
自問自答を皆さんに悟られるわけにはいきません。わたくしはめいっぱいの笑顔で続けます。
「わたくしはサンミリオンに帰るのだし、王都を離れてしまえば姫様もあまり手を出す気にはならないでしょう? しばらく経てばわたくしのことなんて忘れてしまうわ。だって、他にも楽しいことがたくさんあるお姫様なんだもの」
「それは脳天気すぎるよ姉さん」
ラケシスは呆れたようにため息をつきました。
「……楽しいことがたくさんある姫君だからこそ、一度悪感情に取り憑かれたらしつこいんだ。姫は、姉さんを妬んでいるんだよ」
「――」
僕が王宮に話をしておきますから、とカイ様が言いました。
「必ず止めます。ただ、完全に止まるまで……気をつけてください」
「カイ様……」
「どうやって気をつけろというんだ」
ラケシスの嘆きはそのままわたくしの嘆きでした。
わたくしがぽつりと問うと、カイ様は前髪を揺らしました。
「え、ええと。一年前――ですね。僕らが魔王を倒した直後です。王宮が主催してくださった凱旋パーティの際に見初めたそうで」
「――騎士は、なぜ断ったのでしょう?」
王宮に縛られるのが嫌だった? それとも姫と相性が悪いことを分かっていた?
「わがままだったから!」
大声を出したのはソラさんでした。「だってあの姫は偉そうだし、自分に手に入らないものはないと思ってる。そういうの、お兄ちゃんは大嫌い!」
「……でもそれは、ヴァイス様も似たようなものだよね」
ラケシスがぼそりと言うと、「なんだと!」ソラさんはラケシスをにらみました。
「だってそうだろ。ヴァイス様があそこまで姉さんを追い回せるのは、もう姉さんを自分のものだと思っているからだよ。いくら託宣があったからって、異常だ。手に入らないものはないと思ってるとしても驚かない」
「違う! お兄ちゃんは本当に好きなだけ!」
ソラさんがベッドに放置していた人形をわし掴みました。ネズミではなく、いつぞやの藁人形です。わたくしは慌ててソラさんをなだめようとしました。また人形を暴走させられては大変です――。
「大丈夫ソラさん、わたくしはラケシスのようには思っていないから」
「……うー」
「大丈夫。本当に」
……本当に?
自問自答を皆さんに悟られるわけにはいきません。わたくしはめいっぱいの笑顔で続けます。
「わたくしはサンミリオンに帰るのだし、王都を離れてしまえば姫様もあまり手を出す気にはならないでしょう? しばらく経てばわたくしのことなんて忘れてしまうわ。だって、他にも楽しいことがたくさんあるお姫様なんだもの」
「それは脳天気すぎるよ姉さん」
ラケシスは呆れたようにため息をつきました。
「……楽しいことがたくさんある姫君だからこそ、一度悪感情に取り憑かれたらしつこいんだ。姫は、姉さんを妬んでいるんだよ」
「――」
僕が王宮に話をしておきますから、とカイ様が言いました。
「必ず止めます。ただ、完全に止まるまで……気をつけてください」
「カイ様……」
「どうやって気をつけろというんだ」
ラケシスの嘆きはそのままわたくしの嘆きでした。