託宣が下りました。

「魔物をはがさないままこれを続けていたら危険です! 魔物が死ぬと同時に彼女も……!」
「アルテナ!」

 ヴァイスは腰に腰に()いていた剣を外し、アレスに押しつけた。
 身につけていた護符の類もすべて、邪魔だと判断し外した。そして、

「邪魔をするなよ、お前たち」

 まっすぐに禊ぎの水へと歩き出した。

「ヴァイス! 何を!」
「黙って見ていろ!」

 靴を脱ぎ捨てる。そして、服のまま水の中へとざぶりと飛び込む。

 水はヴァイスの腹ぐらいまでの高さがあった。

 水の中の動きづらさなど意に介さず、ヴァイスはアルテナのところへ到達する。

「アルテナ」

 呼ぶと、ぴくりと反応があった。しかし振り向くことなく、彼女はざぶんと頭まで禊ぎの水へと浸かる。

 赤い血の色の水が揺れる。彼女の苦しみの証。

(魔物に抗っている――)

「アルテナ」

 彼女の頭が上がってきたところで、ヴァイスはアルテナを掴まえた。背後から、抱きしめるように。

「―――!」

 反応がある。あ……と枯れた声が彼女の口から漏れる。
 そして、唐突に猛然と暴れ出した。

「放せ! 放して! お願い放して……!」
「なぜ逃げる? 俺はあなたを助けにきたんだ、アルテナ」
「放せ! 放して……!」

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