託宣が下りました。
 私のほうが絶対強いのに! 拳を振り回して力説する妹に、兄は淡々と返した。

「お前が毎日仲間にしてくれー仲間にしてくれーとうるさかったから、アレスは怖がっていた。それが理由だな」
「だって自分を売り込まなきゃ!」
「売り込まなくても毎日一緒にいただろうが。幼なじみなんだから」

 ヴァイスの冷静なつっこみに――巫女アルテナが見たら仰天しそうな冷静さだが――妹は顔を真っ赤にした。

「だって! い、勢いをつけないと、アレス様に話しかけることなんてできなかったんだ!」
「……ああそう言えばお前はアレスと一緒にいても滅多に話さなかったなあ。それがある日突然、仲間にしろー仲間にしろー」
「うるさいな何が悪いんだ。仲間になればもっとアレス様と一緒にいられるから――」
「仲間はともかく、恋人にはなれんぞ」

 ヴァイスはきっぱり言い切った。「というか、アレスはやめておけ。忠告しておく。あれは女泣かせだ」

「な……! 兄貴に何が分かるんだ!」
「分かるさ。しつこいくらい一緒にいるからな」
「一緒に――」

 モラは顔を真っ赤にしたまま、ふくれっ面になった。「ずるい! 兄貴ばっかりアレス様のそばにいて……!」

「……人の話を聞いているか?」
「最近魔物が増えているんだろう? だったら仲間を増やしてもいいはずだ。私も一緒に行く!」
「あのなあ討伐パーティってのはバランスが必要なんだぞ、人数が多ければいいってもんじゃない」

 不毛な会話が積み上げられていく。いつものフォーライク家の食卓。

「平和だね」
「そうだね」

 会話に参加せず兄姉を見守るのは残り二人の妹。双子であるミミ、リリである。

「モラ姉、ヴァイス兄が久しぶりに帰ってきて嬉しいんだね」
「そうだね」
「二人とも、恋には一直線に邁進するところがそっくりだよね」
「そうだね」
「相手の迷惑をかえりみないところもそっくりだよね」
「そうだね」
「たぶんソラちゃんも似たような感じになるよね。この兄妹大丈夫かしら」
「リリたちも兄妹だよ」
「うふふちっとも嬉しくないね」
「そうだね」

 そうして二人はサラダを慎ましくつつく。
 ヴァイスとモラはいまだ口論を続けている。それを音楽のように聞き流しながら、
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