我が町のヒーローは、オレンジでネイビーで時々グレー
8 おせっかいデート
それからまた何日かが過ぎた。
あまりにも不自然な空気をまとい、お互いに避けていたのは誰の目にもそう映ったらしい。

GW中の祝日の朝、朝食を食べ終わった園長が私たちに言ったのだ。

「あなたたち、ふたりで出掛けてきなさい!」

そう言って、今流行りの恋愛映画のチケットを二枚つき出されたのだから、私も誠護さんもタジタジになり。
結局、彼の車でまた隣街のショッピングモールまでやってきたのだ。
ここには映画館もついている。

流行りの恋愛映画だけど、私を泣かせるには充分すぎたらしい。
止まらない涙にハンカチを握りしめていたエンドロールの後のこと。
上映中は夢中で気づかなかったが、隣から見事ないびきが聞こえて、私は慌てて彼を起こした。

「そんなにいい映画だったのか?」

映画館を出て広い通路に差し掛かった時、天窓から届いた日差しに誠護さんがぐっと伸びをしながらそう言った。

「そりゃ、もう。これだけ拗らせといて、最後のアレはずるいですよ~」
「ふーん」

誠護さんはあくびをしながら興味も無さそうにそう答えたから、私はため息をついて空を見上げた。
雲ひとつない、いい天気。

「ピクニック日和ですね~」
「お前、能天気だな」
「なっ!」

怒りに彼を見上げると、穏やかに笑う顔があって、なんだか肩の力が抜けてしまった。

「いい映画を観て泣いたから心までスッキリしたんです!」
「ま、そーゆーことにしといてやる」

誠護さんはケラケラ笑った。
なんだか前に戻ったようで、そっと胸を撫で下ろした。

「これからどーする?」
「え?」
「帰るか? あんまり気が進まねーけど」
「なんでですか?」
「だってお袋になんか言われるだろ、ぜってー」

確かに……。
かといって、特にやりたいこともない。

「じゃあ、ピクニック!」
「はぁ? ガキじゃあるまいし……」
「いいじゃないですか。せっかくいいお天気だし、線路の向こうに大きな運動公園あるじゃないですか、あそこの芝生の広場で寝転がったら気持ちいだろうなぁって……」
「やっぱ、お前、能天気」

誠護さんはそういってくるっと踵を返す。

「ちょ、ちょっと、どこ行くんですか!?」
「外出るなら、こっちの方が早いから」

言いながら振り返ることもせずスタスタ歩いていく誠護さん。
私は慌てて彼の後を追いかけた。
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