公然の秘密
当日を迎えた。

「緊張するな…」

“加藤木”の表札を見ながら尾関は言った。

「大丈夫?」

柚愛が声をかけたら、
「殴られる覚悟はできてるから大丈夫だ」
と、尾関は言い返した。

「麗一さん!」

「すまん、言い過ぎた」

尾関は気持ちを落ち着かせるために深呼吸をすると、柚愛にインターホンを押すようにと視線を向けた。

柚愛は首を縦に振ってうなずくと、インターホンを押した。

「はい」

声が聞こえたので、
「お母さん?

私、柚愛だけど」
と、柚愛は言った。

「待ってて、すぐに開けるから」

目の前のドアが開いた音が聞こえたかと思ったら、
「いらっしゃい」

ドアが開いて母が顔を出して迎えてくれた。
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