公然の秘密
家の中に足を踏み入れると、母に案内されるようにリビングへと向かった。

リビングに到着すると、
「お父さん、柚愛がきましたよ」

ソファーに座っている父に向かって母が声をかけた。

「おう、きたか」

そう言った父に、
「お父さん、ただいま」

柚愛は返事をした。

「あの…これ、もしよろしかったら…」

尾関は母に持っていた紙袋を渡した。

手土産として選んだのは6個入りの白桃ゼリーだった。

「ありがとうございます」

母はお礼を言うと、尾関の手から紙袋を受け取った。

「立ち話もあれだから座りなさい」

「はい」

父に言われて、柚愛と尾関は向かい側のソファーに腰を下ろした。

「初めまして、尾関麗一と申します。

音楽関係の仕事をしています」

尾関は自己紹介をすると、頭を下げた。
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