公然の秘密
夕飯を食べ終えて帰り支度を済ませた。

「今日はありがとうございました」

玄関で尾関は両親に言った。

「またいつでもきていいからね」

「はい」

「それじゃあ、私たちはもう帰るね」

両親にあいさつを終えると、柚愛と尾関は家を出た。

家が見えなくなると、
「はあ、緊張した…」
と、尾関は息を吐いた。

「そう?

そんな風には見えなかったわよ?」

そう言った柚愛に、
「もしかしたら、大賞の時よりも緊張したかも知れない…」

尾関は言い返した。

「そ、そんなに…?」

余裕そうに見えた尾関だったが、本当は相当なまでに緊張していたらしい。

当たり前だが、彼も人間なんだなと柚愛は思った。

「でも、まあ…無事に終わってよかった」

そう言った後で、尾関は手を差し出した。
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