公然の秘密
「尾関さん」

キッチンに母と一緒に立って料理をしている柚愛のその姿を見ていたら、彼女の父に声をかけられた。

「はい」

尾関はそちらの方に視線を向けた。

「娘のことは、どう思っているんですか？」

彼からそう聞かれたので、
「一緒にいて楽しくて、かわいい人だと思っています」
と、尾関は答えた。

「自分は物心ついた時から親がいなかったので、彼女と家族になれることがとても嬉しいんですよ。

家族を持つことが俺の夢だったので、その夢がようやく叶うんだと思ったら嬉しいです」

そう言った尾関に、
「そうか」
と、彼は返事をした。

「一緒に手土産を選んだり、一緒にご飯を食べたり…誰かと一緒に生活をするのがこんなにも楽しいことなんだなって思いました」

尾関はそう言い終えると、ビールを口に含んだ。
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