公然の秘密
尾関が嫌いだと言う訳ではない。

彼には本当によくしてもらっているし、感謝してもしきれないくらいだ。

仲も良好な方だと思うが、柚愛はそう思うようになっていた。

「柚愛、どうした?」

「えっ?」

尾関に声をかけられて我に返った。

「何かぼーっとしてたから…」

「だ、大丈夫だよ…ちょっとぼんやりしてただけだから…」

「そうか…」

尾関は手に取っていたベビー服を元の場所へと返した。

「男の子と女の子、どっちがいいかな。

一姫二太郎と言うくらいだから最初は女の子がいいかな…まあ、男の子でもいいけど。

柚愛はどっちがいいと思う?」

「あー、うん…」

「まあ、子供は授かりものだって言うからな」

「そうだね…」

柚愛と尾関はベビー用品売り場を後にした。
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