公然の秘密
「悪いな、変なところを見せちまって」

加納の後ろ姿を見送ると、尾関は言った。

「い、いえ…」

首を横に振って答えた柚愛に、
「仕事は終わったの?」
と、尾関は聞いてきた。

「はい、終わったばかりです」

柚愛が質問に答えたら、
「じゃあ、今から俺ン家にくる?」
と、目の前のマンションを指差した。

「えっ…家、ですか?」

「あんなところを見せちまった訳だし、茶の1杯くらいはごちそうする」

「で、でも…そこまでしてもらうのは…」

「別にいいじゃん、俺たち友達なんだから」

「…えっ?」

何で“友達”と言われたのか、柚愛は全く理解ができなかった。

数日前にスーパーマーケットで顔をあわせただけなうえに、今は少しだけ会話をしていると言うだけである。

それを何で“友達”と評したのか、訳がわからなかった。
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