公然の秘密
自分たちを包んでいるこの空気を例えるとするならば、お通夜のような状態だろう。

「あいつは…両親はもちろんのこと、愛とか結婚とか家族とかそう言うものを否定することでしか自分を保てなかった。

そんな自分を叱ってくれる人も誰もいなかったから、自分の殻に閉じこもることしかできなかったんだろうな…」

尾関は息を吐いた。

「来世では、ちゃんとしたところに生まれてくることを祈るしかないのかな…?」

呟くように言った柚愛に、
「…そうなることを祈るしか他がないだろうな。

俺もそれ以外、何も思いつかない」
と、尾関は言い返した。

「どれだけ貧乏でも両親がいて自分のことを愛してくれる周りの人間がいて…当たり前なことだけど、その当たり前なところに生まれてくることを祈るしかないな」

尾関はそう言った。
< 208 / 211 >

この作品をシェア

pagetop