公然の秘密
そのとたんに、何だか楽しくなって柚愛は笑ってしまった。

柚愛につられるようにして、尾関も一緒に笑った。

「あの、笑うつもりはなくて…」

「いいんだ、俺もそんなつもりはなかったから…」

だけど、出てしまった笑いは止まらない。

こうして笑ったのはいつぶりだろうかと、柚愛はそんなことを思った。

周りから見たら「何だこいつら…」と思われても仕方がないが、そんなことは特に気にもならなかった。

「何か楽しいな、おい」

そう言った尾関に、
「楽しいね」
と、柚愛は言い返した。

「ちょっと前だったら考えられなかったかもな」

「そうだね」

デパートを後にすると、尾関が手を差し出してきた。

「えっと…」

訳がわからなくて戸惑っている柚愛に、尾関は自分から手を繋いだ。
< 97 / 211 >

この作品をシェア

pagetop