旦那様は征服者~琉聖編~
そう言われ、錠剤を口の中に放り込まれた。
「育実!水!」
「は、はい」
そして水も入れられ、今度は口を塞がれた。

「はーい!小梢、今度はゴックンしてね!」
「んー!んんー!」
「また…頑張るの?
言っとくけど、俺は絶対に手を離さないよ!
ほらっ、ゴックンして?」
イヤイヤと、頭を振る。
しかし、中で錠剤は溶けてしまい苦味が口の中を占領する。

結局、小梢は飲み込んでしまったのだ。

ゴクッと飲み込む音がして、漸く解放された。
「はい、いい子!」
琉聖が、頭を撫でながら言った。
「何の薬なの?なんか、精神がおかしくなるとか?」
「違うよ」
「じゃあ…」
「避妊薬」
「え?」
「ずーっと二人で生きてくから、必要ないモノはいらない!」

この人は、人間ではないのだろうか?
妖しくて、美しい悪魔なのかもしれない。
この美しさで相手を魅了し、心を奪い自分だけのモノにする残酷な悪魔。

「小梢、嬉しいの?泣いてる……可愛い…」

嬉しいわけない。
悲しいのだ。
苦しいのだ。

自分が、あまりにも惨めなのだ。

これから、どうなるんだろう。
意思をなくした人形のように、琉聖に買われて生きていくんだろう。


だって小梢の意思なんて、ないも同然なのだから。

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