田舎猫と都会猫、のはなし。


ビシッ

縄が火を吹き肌を軽く焼いた。

「どうするつもり?
あなたが、ちゃんと小猫ちゃんの面倒を見るって言っていたでしょう?」

マダムは彼の首輪に繋がれている
リードを強く引っ張った。

「今更やめるとか、絶対にダメ。
これは私の命令なの、私のゲームよ。
あなたが小猫ちゃんを一人前に育てるゲーム。
あなたは一生、私の下僕。
わかっているのでしょう?」

「ううっ」

赤い部屋。
赤い衣装のマダムは
縄で縛られ身動きがとれない
彼の背中に
長い爪を食いこませた。

「わかっています、マダム。
あなたへの恩は、一生あっても返せません。

でもダメなんです、
本気で好きになってしまった
みたいなのです。

自分でも不思議なくらい。

愛してる。
もう引き返せないくらい…。」

「…永久(とわ)の愛を誓える相手がいるなんて、羨ましいわね。そんなものは、もうとうの昔に捨てたわ。あなたも、そんな幻想は捨てるのね。わかるでしょ?」

両腕を背中側に縛られ
正座してうつぶせになっている
彼の顎を指で押し上げ、
上を向かせた。

「そうよね。
あの小猫ちゃんのように路頭に迷い、困り果てていた貴方を拾って、ここまで育てたのは、この私。
言うことを聞かず、逆らうなんて、絶対に許さないわ。
たとえ、あなたと境遇が似てたあの子に、肩入れしてるとしてもね。」

「あうっ。」

マダムは首もとに噛みついた。

「貴方は好きなものへの破壊衝動を止められないの。私が押さえていてあげないとね。
その気持ちを押さえて、小猫ちゃんを仕上げるのよ。
いいこと、私の言うことを聞かないと、ダメよ。返事は?」

「はい、…仰せのままに。」

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