田舎猫と都会猫、のはなし。
時間になって
迎えにきたのは、
あの黒服のバーテンダーだった。
彼はオーナーの運転手や
身の回りの世話も
していると言った。
秘書みたいなものらしい。
お店を立ち上げた時から
オーナーのマダムのそばに
一緒にいるらしいこと、
都会猫がまだ若いときに
マダムに拾われ、
彼が、都会猫の世話も
していたことを
車のなかで話してくれた。
「だからワタシが適任だと思って
アナタを迎えに来たの。マダムに頼まれたものだから。」
バーテンダーは少し中性的で
どこか神秘的で。
マダムにどことなく似ているような
そんな気さえする。
「マダムにそんな大切にされるなんて、光栄に思うのね。あの方は、普通の身分では、話すことすらできない方、なのだから。」
「そうなのですか。」
「ええ、アナタには話すけど。
マダムは、とある財閥のご令嬢のうえ、王族の血筋で、海外にも沢山の資産をお持ちだわ。
お店は彼女の道楽のようなものね。
ワタシもそばに置いて貰って、光栄に思ってるわ。
ですから、失礼のないようにね。」
確かに、フツーではない、と思っていた。彼は誇らしげに言った。
「お店も一流の方ばかりだし、お忍びでいらしてる方も多数いるわ。他では類をみない、ね。そういう方でないと入れないの、ここのお店はね。」
「特別なんですね。」
「そう、トクベツ。」