あなたは運命の人
意味が分からないが、各務についていく。
長い廊下を歩くと一つの扉の前に止まった。
各務は俺にフッと笑みを向けると扉の横の壁を指差し、顎でしゃくった。

そこで待てということか?

ここは各務の家。
それに各務は美優を引き止めておいてくれた。

各務を信じきれないが、指示された場所に立つと、各務は扉を開けた。

「美優、お待たせ」

各務はそう言って中に入って行ったが、何故か扉を閉め切らなかった。

「おかえりなさい。お客さん大丈夫?私は放っといてもらっても大丈夫だから」

二十センチ程開いているせいで、中に居る美優の声が聞こえてきた。

「大丈夫、大丈夫。それよりもさ」

「うん?」

「もう桐人君なんてやめちまえ」

その言葉に俺は目を見開く。

「じょ、冗談「冗談じゃねーよ」

美優の動揺した声に被せた各務。

「泊めて欲しいなら泊めてやるよ。でも覚悟しろよ」

「か、覚悟って……?」

「分かるだろ?俺に襲われても文句言うなってこと」

アイツ、黙って見てろって言ったが、何がしたいんだ?
もし美優に強引なことをするなら止めよう。
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