あなたは運命の人
「や、やってたというより、勝手に諒ちゃんが食べたんです!」

「食べたい」

「でも、あの、その……きゃっ!」

桐人君は戸惑う私の右手ごと左手で掴むとスプーンをパクリ。

伏せた目。
睫毛の長さに驚いたのは一瞬。
間近で絡まった視線に鼓動が暴走しているから。

「美味しいよ」

「よ、良かったですっ」

感想を言いたかったのかとホッと安堵したのは束の間。

だって桐人君が離れるどころか、私の右手を掴んだまま顔をじっと覗き込んできたから。

お互いの顔の距離は三十センチ程。

見つめられすぎて、至近距離が恥ずかしくて、頬に熱が集中する。

バクンバクン煩い心臓のせいで胸が苦しくなってきて、思わず顔を逸らした。


「逃げないで」

だが右頬を掴まれて、結局元の至近距離。

大きく心臓が飛び跳ねる。
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