訳あり令嬢は次期公爵様からの溺愛とプロポーズから逃げ出したい
生まれ育った公国と己を愛しんでくれた両親と離れ、一人で新しい土地に来て不安しかなかった。
その地で、フューレアはたくさんの人と縁を結ぶことが出来た。
「お姉様、わたしはずっとお姉様の妹よね?」
今回のことは何も知らないフランカは妹の問いかけに首を小さく傾げる。
「どんなフューだって、わたしの妹よ」
フランカはフューレアの言葉が、侯爵家に嫁いでも妹と思ってね、と受け取り大きく頷いた。
「お姉様が言ってくれた言葉、わたしとても励まされたのよ」
「なにを言ったかしら?」
はて、とフランカは小首をかしげる。
「幸せになることに貪欲になれって。あれを聞いて、わたし、自分の幸せについて手を伸ばしてもいいんだって思えたの。ギルフォードとの結婚を前向きに考えることが出来たのもお姉様の言葉のおかげ」
「そう」
フランカは柔らかく目を細めた。
「お姉様の力強い言葉のお陰で、勇気を出そうって思えた。わたし、ずっと逃げていたのね。十三歳でこの国に来て。これからはずっと隠れて暮らさないといけないんだって思い込んでいた。けれども、それは十三歳のわたしだから隠れないといけなかっただけで、大人になったわたしには色々な選択肢があった」
そしてフューレアは大人になった自分の頭でたくさん悩み考え、今回の結論に達した。
両親は娘の進む道を、可能性を少しでも多く残しておこうと、娘を逃がした。娘を取引の材料に使わせないと、連邦から隠すことを決めた。
フューレアはずっと自分は逃げ隠れていなければならないと思い込んでいたけれど、そうではなかった。未来は自分で選んでも良いのだと、色々な人に教えてもらった。
豪胆で前向きで明るいフランカの生きる姿勢はフューレアにもたくさんの影響を与えた。その姉がフューレアを妹だと即答してくれたことが嬉しかった。姉のように強い自分でありたいと、そう思ったのだ。
「お母様、今までありがとう。十三歳のわたしを受け入れてくれて。優しいお母様が大好きだった。わたしのしたいようにさせてくれて、お屋敷に閉じこもってばかりだったのに、何も言わずにいてくれてありがとう。今思えば、もうちょっと、友だちを作っておけばって思うけれど、それは今後頑張るわ」
「な、なによ、もう。フューってば」
フランカの瞳が潤みだす。
「わたし、お母様の娘になれてよかった。お姉様の妹になれて幸せだった。たくさんたくさん愛してくれてありがとう」
「そんなこと言われちゃったら、ほら。涙が出てしまうわ。ああもう、式はこれからなのよ」
フランカが目を赤くすると、男爵夫人はぽろぽろと大粒の涙を瞳から流し始めた。
釣られてフューレアが瞳に涙を盛り上げると、フランカから「花嫁が泣くな」と怒られてしまった。
フランカはすぐに手巾を取り出してフューレアの目じりにあてがい、化粧が崩れていないか念入りにチェックをする。
「あなたが我が家にやってきたときは、まだこんなにも小さかったのに。時がたつのは早いものねえ。本当、こんなにもきれいになって」
「お母様。フューをこれ以上泣かせるなら部屋から出て行って」
フランカは存外に冷たい声を出す。
「ほら、フューも泣かない。花嫁は世界で一番きれいでないといけないんだから」
「はい、お、お姉様」
「ああ~もう」
フランカが頭を抱えてしまうくらいにはフューレアの声が鼻声になってしまった。
この家族の一員になれてよかった。みんな、みんなフューレアによくしてくれた。
わたしは、みんなに何かを返せたのだろうか。
たくさん受け取るだけだった気がする。
その地で、フューレアはたくさんの人と縁を結ぶことが出来た。
「お姉様、わたしはずっとお姉様の妹よね?」
今回のことは何も知らないフランカは妹の問いかけに首を小さく傾げる。
「どんなフューだって、わたしの妹よ」
フランカはフューレアの言葉が、侯爵家に嫁いでも妹と思ってね、と受け取り大きく頷いた。
「お姉様が言ってくれた言葉、わたしとても励まされたのよ」
「なにを言ったかしら?」
はて、とフランカは小首をかしげる。
「幸せになることに貪欲になれって。あれを聞いて、わたし、自分の幸せについて手を伸ばしてもいいんだって思えたの。ギルフォードとの結婚を前向きに考えることが出来たのもお姉様の言葉のおかげ」
「そう」
フランカは柔らかく目を細めた。
「お姉様の力強い言葉のお陰で、勇気を出そうって思えた。わたし、ずっと逃げていたのね。十三歳でこの国に来て。これからはずっと隠れて暮らさないといけないんだって思い込んでいた。けれども、それは十三歳のわたしだから隠れないといけなかっただけで、大人になったわたしには色々な選択肢があった」
そしてフューレアは大人になった自分の頭でたくさん悩み考え、今回の結論に達した。
両親は娘の進む道を、可能性を少しでも多く残しておこうと、娘を逃がした。娘を取引の材料に使わせないと、連邦から隠すことを決めた。
フューレアはずっと自分は逃げ隠れていなければならないと思い込んでいたけれど、そうではなかった。未来は自分で選んでも良いのだと、色々な人に教えてもらった。
豪胆で前向きで明るいフランカの生きる姿勢はフューレアにもたくさんの影響を与えた。その姉がフューレアを妹だと即答してくれたことが嬉しかった。姉のように強い自分でありたいと、そう思ったのだ。
「お母様、今までありがとう。十三歳のわたしを受け入れてくれて。優しいお母様が大好きだった。わたしのしたいようにさせてくれて、お屋敷に閉じこもってばかりだったのに、何も言わずにいてくれてありがとう。今思えば、もうちょっと、友だちを作っておけばって思うけれど、それは今後頑張るわ」
「な、なによ、もう。フューってば」
フランカの瞳が潤みだす。
「わたし、お母様の娘になれてよかった。お姉様の妹になれて幸せだった。たくさんたくさん愛してくれてありがとう」
「そんなこと言われちゃったら、ほら。涙が出てしまうわ。ああもう、式はこれからなのよ」
フランカが目を赤くすると、男爵夫人はぽろぽろと大粒の涙を瞳から流し始めた。
釣られてフューレアが瞳に涙を盛り上げると、フランカから「花嫁が泣くな」と怒られてしまった。
フランカはすぐに手巾を取り出してフューレアの目じりにあてがい、化粧が崩れていないか念入りにチェックをする。
「あなたが我が家にやってきたときは、まだこんなにも小さかったのに。時がたつのは早いものねえ。本当、こんなにもきれいになって」
「お母様。フューをこれ以上泣かせるなら部屋から出て行って」
フランカは存外に冷たい声を出す。
「ほら、フューも泣かない。花嫁は世界で一番きれいでないといけないんだから」
「はい、お、お姉様」
「ああ~もう」
フランカが頭を抱えてしまうくらいにはフューレアの声が鼻声になってしまった。
この家族の一員になれてよかった。みんな、みんなフューレアによくしてくれた。
わたしは、みんなに何かを返せたのだろうか。
たくさん受け取るだけだった気がする。