やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました
清算が終わった。
 今はもう、あれだけ好きだった愛莉に対して、無駄な時間を過ごして来た、と。自分を詰りたい気持ちしか湧いて来ない。
 尽くして尽くして尽くして……
 愛莉が笑ってくれれば幸せだと思ってた愚かな自分。

(愛莉は俺なんか、一度も見た事なんて無かったのに……)

 同棲と聞いて浮かれてしまった。
 あれこれ余所見をしていても、結局は俺を選ぶんだ、と。
 でも違った。

 愛莉は別の誰かと結婚するつもりだったらしい。
 会社の誰かが嗤いながら教えてくれた。

 会社では同棲は伏せて、ただの幼馴染として振る舞ってきたから。不思議な事に、誰も愛莉と俺がそんな関係だとは疑わなかった。
(釣り合って無かったのかもな……)
 
 そいつも愛莉が好きだったから、俺の視線の先にいつもいる愛莉に気が付いたんだろう。
 
 同じように愛莉に弄ばれている奴。

 同じ……

 目の前のこの嫌らしい笑みを浮かべる奴と、俺は……

(そんなのは……)

 嫌だ──

 そうなってやっと、俺は愛莉の取り巻きの一人に過ぎない。己の惨めな現実を受け入れた。
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