やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました
気に入らない日向の彼女だからって邪険にするのは何か嫌で、初めからいつもニコニコ挨拶してた。
最初は取り繕ってきたものが、いつの間にか会えるのが素で嬉しくなっていて。
笑顔が自然と溢れるようになった事は、マネージャーの亜沙美にあっさりと指摘された。
『あんたねえ……』
溜息混じりに呆れた目を向けられる。
亜沙美はそういう気質というか、面倒見が良くて、たまにお節介な奴。そのせいか人を良く見てる。
『皆が幸せに、なんて言わないけどさ。雪子ちゃんに迷惑かけないよーに』
幸せな奴は余裕があるもんだ。
あいつはサークルのキャプテンと上手くいってて、進路に迷いもない。今現在、悩みらしきものがなく幸せな人生らしい。
今は人の世話を焼くのに精を出してる。
もうその頃には俺は三上さんを見つけると、主人を見つけた犬並みに嬉しくてたまらなかったから、あいつには俺が、千切れんばかりに尻尾振るってるようにでも見えたようで。まあ事実に近いし、特に否定もしなかった。
不憫なものを見るような顔は向けられたけれど……
そんな生活を送っていると気付いてしまう。
日向が幼馴染に度々会っている事に。
ささやかな言動から。なんとは無しに感じ取るそれらの疑惑から。
──何で俺、日向の一挙手一投足なんて気にするような真似してるんだ? 俺がお前の彼女かよ。気持ち悪。