やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました

「だ、騙されてるのよ……雪子さんに……」
 震えながらやっと言葉を紡ぐ彼女に、それでも自分と同じだと同情しきれない心がある。そしてそんな愛莉さんを、河村君は相変わらず冷めた目で見ていた。

「騙してたのは日向だろう。……こんな女と二股を掛けられてたなんて……もっと早く知りたかったのはこっちの方だ」
 呟いた河村君の言葉は全部は聞き取れなくて……
 けれど話は終わりとばかりに私の肩を抱いたまま、踵を返す。
「あ、待って……」

 呼び掛けたものの、どうして良いのか分からないような、そんな愛莉さんの戸惑いすら無視し、河村君も私も、彼女の前を立ち去った。
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