運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~
その日の夜

二人の傷の出血も止まり、私たちはホテルのレストランで食事をしていた。

「早乙女、でもなんで俺が狙われるって分かったんだ?」

「…うん。実は俺も以前に、あの修道院の修道士に声かけられたことがあって、驚いたんだ。普通の人間には分からないはずなのに、それで嫌な予感がしたんだ。」

「…お前が来てくれなかったら、面倒なことになっていただろうな…あの修道士に、手は出したくないし…」

二人が真剣に話をしているので、私は少し外の空気を吸いたくて、レストランのバルコニーに出た。

空を見上げると、東京では見ることが出来ない満天の星が輝いている。

(すごい…星に手が届きそうって、こういう事なのかも…)

私はしばらく空をじっと眺めていた。



突然、私は誰かに口を押えられ、強い力で腕を掴まれた。

「…誰!!」

振り返ると、その男に見覚えがある。
昼間会った修道院の人達だ。


「…い…いや…たす…け…て!!」


口を押えられて大きな声がでない!!


(…圭吾…早乙女さん…助けて…)


私はバルコニーからホテルの庭に連れ出されてしまった。
その中の一人が、ナイフのような物を出した。


(…私…殺される…)
(…恐怖で目をぎゅっと閉じた…)


その時、明るい光が輝いた感じがして目を開けた。

目を開けてみると…。

輝く光の中に大天使と悪魔が立っていた。

その光景は息をのむほど美しい。現実なのか夢なのか疑うほどの光景だ。

大天使が男達に向かい話し始める。

「お前達は誰だ、修道士じゃないな?」

男達の中で、一人が笑みを浮かべて白い服を脱ぎ捨てた。

「お前達さえいなければ、俺は大天使にもなれたのに!それにリリス、お前を愛していたのに俺に気づきもしない。だから、この女を殺して、お前達が悲しむ姿を見たいのだ!」


(…っえ!何を言っているの?)


男は私の首に舌を這わせて舐めまわしながら、私の首にナイフを近づける!

その時、悪魔が手を振り上げた。

男の持っていたナイフが吹き飛ぶ。

次の瞬間、その悪魔は私をふわっと抱き上げた。

悔しそうな顔をする男に、大天使は光輝く剣で胸を突き刺した。

胸に剣が刺さった男は、静かに倒れこんだ。

周りの男たちは、逃げるように走り去る。


(…私…助かったんだ…)


安心感からか、涙が溢れ出たて力が抜けていく。

ふと気が付くと、圭吾と早乙女さんが心配そうに私を見つめていた。

「…圭吾、早乙女さん、ごめんなさい。私が油断してたから、こんなことになってしまって!」


「恵美ちゃんは悪くないよ…無事でよかったよ…」
早乙女さんは微笑んでくれた。


圭吾は、私を引き寄せ無言で抱き締めた。

「…圭吾…ありがとう…助けてくれて…」

言葉が遮られた。
圭吾の口づけで唇が塞がれた。


“ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ”

後ろから、早乙女さんの咳払いが聞こえた。
「あの…、キスの最中に悪いけど、二人の時にしてくれるかなぁ…」


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