【完】夢見るマリアージュ

「え?そうなの?」

にこりと彼女が嬉しそうに笑った顔が印象的だった。

「はい、実は岸田さんと私が通っているジムが一緒なんです。 あんなに綺麗なのにジムに通って努力しているのは意外でしたけど。
私が頼んだら、面倒くさいって言いつつも洋服もメイク用品も選んでくれたんです。
それにこの間初めて会社以外でお食事にも連れて行ってもらって……
ずっと怖い人だと思っていたけれど、それは私が彼女をよく知ろうとしていなかったからなのだと痛感しました。
勝手に壁を作っていたのは自分の方だったんです。  

岸田さんは、可愛い人です」

ハッキリとそう言い放つ彼女の言葉を聞いて、目から鱗が落ちる。
そう言われてみれば……俺も人に壁を作りやすいタイプの人間だ。
勝手に苦手意識を作って、その人を知ろうともせずに自分の中で判断をしてしまっていた。

阿久津フーズファクトリーの時期跡取りである事が恥ずかしい。 城田さんの真っ直ぐな言葉を聞いて思った。

若干気まずい空気になってしまったが、ちょうど注文したピザを運んできた店員さんが入ってきて空気が変わる。

運ばれたピザを見て、彼女の瞳が途端に輝きだしたからだ。 思わず頬が緩んでしまう。

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