ふたつ名の令嬢と龍の託宣
その気安い問いに、王妃は目を見開いた。
「あら、そうね。どうして気づかなかったのかしら」
昼間目にしたハニーブロンドと緑の瞳は、ラウエンシュタイン家の特徴ではないか。
茶会の時、あの娘はずっと目を伏せていたが、あそこまで見事に緑の瞳を持つ者は、ブラオエルシュタイン国ではそうはいなかった。あの令嬢は、マルグリットとイグナーツの娘だったのだ。
イジドーラとマルグリットは社交界デビューが近く、ふたりとも公爵家の令嬢であったため、何かと比べられることが多かった。マルグリットの見事なハニーブロンドと、自分のくすんだアッシュブロンドが話題にされ、たびたび悔しい思いをしたものだった。
イジドーラはマルグリットが嫌いだった。だが、彼女はもういない。
あの令嬢にマルグリットの面影はあっただろうか? ふと思って、イジドーラ王妃は首をひねった。
所作の美しい娘ではあったが、どうも顔が思い出せない。昼間にはあれだけまじまじと観察したというのに、あるのはぼんやりとしたイメージだけ。
人間観察に長けたイジドーラにしてはめずらしいことであった。
「解せないわ」
たたんだままの扇を口元にあて、イジドーラはつぶやいた。
「あら、そうね。どうして気づかなかったのかしら」
昼間目にしたハニーブロンドと緑の瞳は、ラウエンシュタイン家の特徴ではないか。
茶会の時、あの娘はずっと目を伏せていたが、あそこまで見事に緑の瞳を持つ者は、ブラオエルシュタイン国ではそうはいなかった。あの令嬢は、マルグリットとイグナーツの娘だったのだ。
イジドーラとマルグリットは社交界デビューが近く、ふたりとも公爵家の令嬢であったため、何かと比べられることが多かった。マルグリットの見事なハニーブロンドと、自分のくすんだアッシュブロンドが話題にされ、たびたび悔しい思いをしたものだった。
イジドーラはマルグリットが嫌いだった。だが、彼女はもういない。
あの令嬢にマルグリットの面影はあっただろうか? ふと思って、イジドーラ王妃は首をひねった。
所作の美しい娘ではあったが、どうも顔が思い出せない。昼間にはあれだけまじまじと観察したというのに、あるのはぼんやりとしたイメージだけ。
人間観察に長けたイジドーラにしてはめずらしいことであった。
「解せないわ」
たたんだままの扇を口元にあて、イジドーラはつぶやいた。