ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【番外編 《モノローグ》転生王女の回顧録】

 わたしの名はテレーズ・ド・アランシーヌ。

 ブラオエルシュタイン国の第二王女として生まれ、三年前、ここアランシーヌ国に嫁いできた。
 今は第三王子妃として役目を果たす毎日だ。嫁いだ以上、アランシーヌに骨をうずめる覚悟で日々公務に当たっている。

 アランシーヌは生まれ育った平和な母国とは違い、大陸に大国として君臨している。しかしその分、国内外問わず争い事が絶えず、すべてが盤石とは言い難い国だ。

 アランシーヌ王家には三人の王子がいる。

 温厚だが扱いやすいぼんくら第一王子。
 野心家でやることがえぐい切れ者第二王子。
 そして、甘やかされて育ったわがままオレ様第三王子。

 第一王子と第三王子は正妃の子供だが、第二王子は王が側妃に産ませた子だ。王太子は今のところ第一王子が有力候補となっているものの、王による指名はまだ行われていない。

 保守派は第一王子を意のままに操り今の権力を維持したい。改革派は敵が多いが行動力のある第二王子を。そして、王家から威信を取り戻したい教会は第三王子の後ろ盾を買って出た。

 そんな微妙なパワーバランスのもと各派閥同士が日々小競り合い、王家・貴族・教会が入り乱れた混戦状態となっている。これが今のアランシーヌ国の現状である。足の引っ張り合いは日常茶飯事、毒殺、暗殺なんでもござれな陰謀渦巻くそんな世界だ。

 わたしはそれを承知で自らここに嫁ぐ道を選んだ。そのために幼少期から英才教育を受け、この地位を得るために日々努力してきた。

 ――すべてはアンネマリー、彼女のために。

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