ふたつ名の令嬢と龍の託宣
【第9話 殿下の寵愛】
その日、午後の予定がすべてなくなった。
また例のごとく義母上のきまぐれだ。たまにはゆっくりしろとの気遣いかもしれないが……。
そう思ったハインリヒ王子は、護衛のカイを連れて、自身の執務室へと向かった。
執務室の椅子に座ると、どっと疲れが押し寄せてきた。気が緩んだのか、ここから動きたくない気分に駆られる。
すると、隣の応接室から、悲鳴のような声が聞こえた。あの気の毒な令嬢を思い出し、ハインリヒは重い腰を上げた。あれから一週間は経つ。ジークヴァルトからは、特別報告は上がっていなかった。
「邪魔するなんてヤボですよ?」
カイがおもしろそうに言ったが、自分もついてくる気満々の様子だ。
「邪魔ではない、経過の確認だ。だったらお前はついてくるな」
「ええー、のけ者にしないでくださいよー。あんなにおもしろいジークヴァルト様、めったに見られないんですからー」
その意見には同感だったので、ハインリヒは、好きにしろ、とだけ言って応接室に向かった。
また例のごとく義母上のきまぐれだ。たまにはゆっくりしろとの気遣いかもしれないが……。
そう思ったハインリヒ王子は、護衛のカイを連れて、自身の執務室へと向かった。
執務室の椅子に座ると、どっと疲れが押し寄せてきた。気が緩んだのか、ここから動きたくない気分に駆られる。
すると、隣の応接室から、悲鳴のような声が聞こえた。あの気の毒な令嬢を思い出し、ハインリヒは重い腰を上げた。あれから一週間は経つ。ジークヴァルトからは、特別報告は上がっていなかった。
「邪魔するなんてヤボですよ?」
カイがおもしろそうに言ったが、自分もついてくる気満々の様子だ。
「邪魔ではない、経過の確認だ。だったらお前はついてくるな」
「ええー、のけ者にしないでくださいよー。あんなにおもしろいジークヴァルト様、めったに見られないんですからー」
その意見には同感だったので、ハインリヒは、好きにしろ、とだけ言って応接室に向かった。