ふたつ名の令嬢と龍の託宣

プロローグ

 閉ざされし小国ブラオエルシュタイン。

 龍が導くこの国は、他国との交わりも薄く、建国から平穏な歴史を重ねてきた。

 時の移ろいとともに願いは薄れ、(いしずえ)(かせ)は無慈悲に重みを増していく。祈りの契約が生む果ては、無垢な傾慕(けいぼ)久遠(くおん)の呪縛か……

 宿命(さだめ)に抗うことは許されず、それでも選ばれし者たちは、残された時にまばゆき光を放つ。

 ここに刻むのは、龍に惑わされし者たちの切なき愛の物語――





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