ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【番外編・伯爵家の面接風景】

 五人前の朝食をぺろりとたいらげて一息ついていたところに、義弟のルカが部屋を訪ねてきた。

「義姉上、今日は使用人の面接の日ですので、お迎えにあがりました」

 九歳とは思えない優雅な動作で、ルカは騎士のように恭しくリーゼロッテに手を差しのべた。

 ルカは、亜麻色の髪と水色の瞳の、なんとも可愛らしい男の子である。目に入れても絶対に痛くない。その可愛いさは、もう、食べてしまいたいほどである。

 背丈はまだまだリーゼロッテの方が高いが、あと数年もすればきっとかなりのイケメンに育つだろう。未来のダーミッシュ伯爵として、社交界で令嬢の引く手あまたの貴公子になるに違いない。

(だめよ。まだわたしだけのルカでいて!)

 何も言わずにリーゼロッテはひしとルカを抱きしめた。

「あ、義姉上」

 照れて困ったようにルカが顔を赤らめる。差し出していた手が宙をさまよって、行き場に困っているようだ。

(ああ、可愛すぎる)

 家族のことをいえないくらい、リーゼロッテは超がつくほどのブラコンなのであった。

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