ふたつ名の令嬢と龍の託宣
ルカに手を引かれて、リーゼロッテはお屋敷の長い廊下を歩いていく。
廊下をリーゼロッテが歩くと必ず一度は転ぶのだが、ルカが手を引いてくれると、なぜだか何事もなくスムーズに歩けるのだ。
どんなに慎重にすり足で歩いても、いきなり足を引っかけられたかのようにリーゼロッテは転んでしまう。
どれだけ運動神経がないのだろうと、自分でもあきれてしまうのだが、こればかりはどうしようもない。最近ではすっかりあきらめ、痛くない転び方、かつ令嬢にふさわしく優雅に見える転び方を研究し模索する毎日であった。
今ふたりが目指しているは、父親の執務室である。
「父上、義姉上をお連れしました」
ルカがノックすると、家令のダニエルが扉を開けて、恭しくリーゼロッテを部屋の中へいざなった。
「おお、わたしの可愛いリーゼ。今日も愛らしすぎて、もう、食べちゃいたいくらいだ」
ダーミッシュ伯爵であるフーゴは、立ち上がってリーゼロッテをその両手で抱きしめた。
「本当だわ、わたしの可愛いリーゼ。目に入れても絶対に痛くないわ」
奥のソファに座っていた母親のクリスタも、リーゼロッテを抱きしめてその頬にキスをする。
廊下をリーゼロッテが歩くと必ず一度は転ぶのだが、ルカが手を引いてくれると、なぜだか何事もなくスムーズに歩けるのだ。
どんなに慎重にすり足で歩いても、いきなり足を引っかけられたかのようにリーゼロッテは転んでしまう。
どれだけ運動神経がないのだろうと、自分でもあきれてしまうのだが、こればかりはどうしようもない。最近ではすっかりあきらめ、痛くない転び方、かつ令嬢にふさわしく優雅に見える転び方を研究し模索する毎日であった。
今ふたりが目指しているは、父親の執務室である。
「父上、義姉上をお連れしました」
ルカがノックすると、家令のダニエルが扉を開けて、恭しくリーゼロッテを部屋の中へいざなった。
「おお、わたしの可愛いリーゼ。今日も愛らしすぎて、もう、食べちゃいたいくらいだ」
ダーミッシュ伯爵であるフーゴは、立ち上がってリーゼロッテをその両手で抱きしめた。
「本当だわ、わたしの可愛いリーゼ。目に入れても絶対に痛くないわ」
奥のソファに座っていた母親のクリスタも、リーゼロッテを抱きしめてその頬にキスをする。