ふたつ名の令嬢と龍の託宣
【第22話 譲れない思い】
「リーゼはジークヴァルト様と、うんと仲良しさんになったみたいね」
主役が連れ去られてしまったピクニックの席で、残された者のほとんどが唖然とした状態だったが、その雰囲気をまったく意に介した様子もなく、クリスタがのんびりした調子で言った。
「喜ばしいことだが、わたしとしては複雑な気分だよ」
フーゴはがっくりとした様子でうなだれている。気分はもう花嫁の父である。
リーゼロッテを連れ去った公爵の馬は、一行がいる丘の少し離れた花畑の方へ行ったようだ。ピクニックに同行した使用人たちは、みなそろって二人の動向を逐一見守っている。
肉眼でそこにいるな、程度の大きさだが、ふたりが馬を降りて仲睦まじそうに語らっている様子を目にすることができた。
「……ねえ、エラ。リーゼロッテお嬢様は大丈夫なのかしら?」
クリスタ付きの年配の侍女が、エラにこそりと話しかける。そして、言いにくそうに言葉を続けた。
「公爵様はお若いのにとても威厳がおありだし、お嬢様が怖がられたりしてないか、とても心配だわ。その、お噂で公爵様はとても恐ろしい方だとお聞きするし……」
主役が連れ去られてしまったピクニックの席で、残された者のほとんどが唖然とした状態だったが、その雰囲気をまったく意に介した様子もなく、クリスタがのんびりした調子で言った。
「喜ばしいことだが、わたしとしては複雑な気分だよ」
フーゴはがっくりとした様子でうなだれている。気分はもう花嫁の父である。
リーゼロッテを連れ去った公爵の馬は、一行がいる丘の少し離れた花畑の方へ行ったようだ。ピクニックに同行した使用人たちは、みなそろって二人の動向を逐一見守っている。
肉眼でそこにいるな、程度の大きさだが、ふたりが馬を降りて仲睦まじそうに語らっている様子を目にすることができた。
「……ねえ、エラ。リーゼロッテお嬢様は大丈夫なのかしら?」
クリスタ付きの年配の侍女が、エラにこそりと話しかける。そして、言いにくそうに言葉を続けた。
「公爵様はお若いのにとても威厳がおありだし、お嬢様が怖がられたりしてないか、とても心配だわ。その、お噂で公爵様はとても恐ろしい方だとお聞きするし……」