ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 ジークヴァルトの強さがどれくらいなのかリーゼロッテにはわからなかったが、王太子付きの騎士を務めているくらいだ。そこら辺の騎士よりは腕は立つのだろう。

 刃のつぶされた模擬剣といっても、打ち所が悪いと打撲や骨折など怪我をすることもあり得るのだ。

(ヴァルト様、手加減してくれるわよね。どうかルカが怪我をしたりしませんように……)

 そんな落ち着きない様子のリーゼロッテを見て、アデライーデは小声でやさしく話しかけた。

「心配そうね?」
「アデライーデお姉様……やはりふたりを止めた方が……」
「ふふ、姫の立場はつらいわね。男同士、譲れない戦いもあるのよ。今は黙って見守ってあげて」

 不安そうなリーゼロッテをよそに、アデライーデは一貫して面白がっているようだ。

「ちなみにどちらを応援しているの?」
「それはもちろんルカですわ」

 リーゼロッテは即答した。

「ルカが怪我をしたらどうしようと思うとただ心配で……」
「多少の怪我はご愛嬌よ。それにあの子もなかなか負けてないと思うわ」

 リーゼロッテに笑顔を向けると、アデライーデは対峙する二人に視線を戻した。

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