ふたつ名の令嬢と龍の託宣
◇
王城に知らせが届いて、ジークヴァルトは急ぎ領地に戻ってきた。馬車も使わず豪雨の中、馬で休まず駆けてきたジークヴァルトは、全身ずぶ濡れの状態だった。
屋敷の床が濡れるのも気にせず、ジークヴァルトは大股で歩を進めた。家令のエッカルトに詳細を報告させつつ、歩きながら濡れた服をそこかしこに脱ぎ捨てていく。
「それで今ダーミッシュ嬢はどうしている?」
「リーゼロッテ様はすっかり落ち着かれたご様子ですが、念のため部屋でお休みになっていただいております」
ジークヴァルトにタオルをかけながら、エッカルトが新しい服を差し出して、ジークヴァルトを手際よく着替えさせていく。
ふたりがリーゼロッテの部屋の前に到着する頃には、ジークヴァルトは髪は濡れているものの乾いた服を身にまとっていた。
扉をノックする前に部屋からエマニュエルが顔を出した。
「リーゼロッテ様は今眠っておられます」
そう言うエマニュエルの顔色はすこぶる悪かった。
ジークヴァルトは無言で部屋の中に歩を進め、リーゼロッテの寝台へと躊躇なく進んでいった。
リーゼロッテは規則正しい寝息を立ててぐっすりと眠っている。顔色は悪くない。ジークヴァルトは覗き込むようにして、その頬にそっと指を滑らせた。
頬から額へ、額から耳元へ。そしてまた頬へ。
最後に頭をひとなでしてから、ジークヴァルトはリーゼロッテの髪をひと房持ち上げた。蜂蜜色の髪にそっと口づけを落とす。
その指からするりと髪が滑り落ち、ジークヴァルトはようやく顔を上げた。
振り向くとエマニュエルが深々と頭を下げていた。
「申し訳ございませんでした。わたしがそばについていながら、リーゼロッテ様を危険な目に合わてしまいました」
「いや、エマの対応が早かったと聞いた。問題ない。一晩眠れば彼女も普段通り動けるだろう」
静かに言ってジークヴァルトはエマニュエルの顔を上げさせた。エマニュエルの目には涙が滲んでいる。
「エマも今日はもう休んでくれ。大丈夫だ。問題ない」
そう言ってジークヴァルトは、確かめるようにもう一度、リーゼロッテの髪をするりとなでた。
王城に知らせが届いて、ジークヴァルトは急ぎ領地に戻ってきた。馬車も使わず豪雨の中、馬で休まず駆けてきたジークヴァルトは、全身ずぶ濡れの状態だった。
屋敷の床が濡れるのも気にせず、ジークヴァルトは大股で歩を進めた。家令のエッカルトに詳細を報告させつつ、歩きながら濡れた服をそこかしこに脱ぎ捨てていく。
「それで今ダーミッシュ嬢はどうしている?」
「リーゼロッテ様はすっかり落ち着かれたご様子ですが、念のため部屋でお休みになっていただいております」
ジークヴァルトにタオルをかけながら、エッカルトが新しい服を差し出して、ジークヴァルトを手際よく着替えさせていく。
ふたりがリーゼロッテの部屋の前に到着する頃には、ジークヴァルトは髪は濡れているものの乾いた服を身にまとっていた。
扉をノックする前に部屋からエマニュエルが顔を出した。
「リーゼロッテ様は今眠っておられます」
そう言うエマニュエルの顔色はすこぶる悪かった。
ジークヴァルトは無言で部屋の中に歩を進め、リーゼロッテの寝台へと躊躇なく進んでいった。
リーゼロッテは規則正しい寝息を立ててぐっすりと眠っている。顔色は悪くない。ジークヴァルトは覗き込むようにして、その頬にそっと指を滑らせた。
頬から額へ、額から耳元へ。そしてまた頬へ。
最後に頭をひとなでしてから、ジークヴァルトはリーゼロッテの髪をひと房持ち上げた。蜂蜜色の髪にそっと口づけを落とす。
その指からするりと髪が滑り落ち、ジークヴァルトはようやく顔を上げた。
振り向くとエマニュエルが深々と頭を下げていた。
「申し訳ございませんでした。わたしがそばについていながら、リーゼロッテ様を危険な目に合わてしまいました」
「いや、エマの対応が早かったと聞いた。問題ない。一晩眠れば彼女も普段通り動けるだろう」
静かに言ってジークヴァルトはエマニュエルの顔を上げさせた。エマニュエルの目には涙が滲んでいる。
「エマも今日はもう休んでくれ。大丈夫だ。問題ない」
そう言ってジークヴァルトは、確かめるようにもう一度、リーゼロッテの髪をするりとなでた。