ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「リーゼロッテ様!」

 エマニュエルは傾いだリーゼロッテに駆け寄って、その体を腕に受け止めた。

「こちらをお食べになってください」

 明らかに力を使いすぎて脱力しているリーゼロッテの口内に、エマニュエルは無理矢理クッキーを押し込んだ。

 ひとつまたひとつと震える指でクッキーを差し入れる。リーゼロッテはうつろな瞳で、ゆっくりとクッキーを咀嚼(そしゃく)した。
 少しずつリーゼロッテの頬に赤みがさしていく。ほっとしたのもつかの間、雨に濡れたリーゼロッテの体が、思った以上に冷たいことにエマニュエルは気づいた。

「父さん! マテアス! 誰でもいいから早く来てちょうだい!」

 子爵夫人らしからぬエマニュエルの大きな声が、公爵家の廊下に響いていった。

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