ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【第28話 巡る奔流】

 リーゼロッテが倒れた翌日、フーゲンベルク家の執務室では緊急の話し合いが行われていた。

 集まった面々はジークヴァルトをはじめ、家令のエッカルトにマテアス、そして子爵夫人のエマニュエルだ。ここにいるのは全て力ある者、異形の者を祓う力を持った者だった。
 公爵家には力ある者がこの他にもいるが、今日はリーゼロッテに近しい者にとどめられた。

 浄化の力を有するのは、王家の血が濃く入った者だけである。
 にもかかわらず、使用人であるエッカルトたちが力を持っているのは、その昔、エッカルトの家系アーベントロート家で、公爵家の人間による()()()()があったからに他ならない。

 使用人であっても王家の血筋が入った以上、龍の託宣が降りないとも限らなかった。そういった事情でアーベントロート家は、王家の監視下に置くためにもフーゲンベルク公爵家で庇護を受けてきた。

 そんな面々が神妙な顔つきでひざを突き合わせて話し込んでいる。
 ジークヴァルトの守護者であるジークハルトが、その周りをふよふよと漂いながら、のんびりとその様子を見守っていた。

< 583 / 2,019 >

この作品をシェア

pagetop