ふたつ名の令嬢と龍の託宣
冷たい声でマテアスが睨みつけた。その言葉をジークヴァルトは無言で受け止めている。
「ち、違うのよ、マテアス。ヴァルト様は何も悪くないの!」
慌てて立ち上がり、リーゼロッテはジークヴァルトをかばうようにマテアスの前に立った。
「本当よ? わたくし少し怖かっただけで、今は何ともないわ。それに、ヴァルト様はわたくしを助けてくださったの。だからそんなふうにヴァルト様を責めないで……!」
泣きはらした赤い目のリーゼロッテに懇願されて、マテアスはハの字に眉を下げた。
エマニュエルは複雑な心境だったが、正直ほっとしていた。怖い思いをしただろうに、リーゼロッテはジークヴァルトを恨んではいないようだ。
それに、ジークヴァルトを殴ることでマテアスがそれを引き受け、ジークヴァルトの罪を軽くした。もちろん、それですべてが許されるというわけにはいかないだろうが。
「使用人が主人を殴るなど、一体どういうことだ!」
騒ぎを聞きつけたエーミールが、後ろから割って入るように怒りの声を上げた。エーミールはジークヴァルトを心酔している。マテアスの行動は到底許せるものではなかった。
「いや、いい。今回の件はマテアスの言う通り、すべてオレの不手際だ。先ほどのマテアスの所業は不問とする」
ジークヴァルトは静かな声で言った。
当主の命令は絶対だ。不服を申し立てる者がいるはずもなく、これ以上、詮索できる雰囲気でもなかった。
事の次第は、エッカルトにのみジークヴァルトの口から真実が語られた。その他の者は、見聞きしたこと一切の口外を禁じられ、今回の騒動は秘密裏に処理されることとなった。
「ち、違うのよ、マテアス。ヴァルト様は何も悪くないの!」
慌てて立ち上がり、リーゼロッテはジークヴァルトをかばうようにマテアスの前に立った。
「本当よ? わたくし少し怖かっただけで、今は何ともないわ。それに、ヴァルト様はわたくしを助けてくださったの。だからそんなふうにヴァルト様を責めないで……!」
泣きはらした赤い目のリーゼロッテに懇願されて、マテアスはハの字に眉を下げた。
エマニュエルは複雑な心境だったが、正直ほっとしていた。怖い思いをしただろうに、リーゼロッテはジークヴァルトを恨んではいないようだ。
それに、ジークヴァルトを殴ることでマテアスがそれを引き受け、ジークヴァルトの罪を軽くした。もちろん、それですべてが許されるというわけにはいかないだろうが。
「使用人が主人を殴るなど、一体どういうことだ!」
騒ぎを聞きつけたエーミールが、後ろから割って入るように怒りの声を上げた。エーミールはジークヴァルトを心酔している。マテアスの行動は到底許せるものではなかった。
「いや、いい。今回の件はマテアスの言う通り、すべてオレの不手際だ。先ほどのマテアスの所業は不問とする」
ジークヴァルトは静かな声で言った。
当主の命令は絶対だ。不服を申し立てる者がいるはずもなく、これ以上、詮索できる雰囲気でもなかった。
事の次第は、エッカルトにのみジークヴァルトの口から真実が語られた。その他の者は、見聞きしたこと一切の口外を禁じられ、今回の騒動は秘密裏に処理されることとなった。