ふたつ名の令嬢と龍の託宣
【第6話 眠り姫の憂鬱】
「リーゼロッテ様ぁ、おはようございますぅ。お召し替えのお時間ですよぅ」
三時間越えの晩餐を乗り越え、昨夜は疲れ切ってぐったりと眠ってしまった。そのおかげというべきか、夢も見ずにぐっすり眠れて、いつも以上に目覚めの良い朝を迎えたリーゼロッテだった。
しかし好調な体とは裏腹に、精神はダメージをくらったままだ。夕べは大勢の使用人たちが見守る中、繰り広げられたあーん攻撃に、最後の方は無心で咀嚼を繰り返した。
(どうせなら、もっと味を堪能したかった……)
遠い目をしてリーゼロッテは、侍女の手を借りて夜着を脱いだ。
「本日はこちらのドレスでよろしいですかぁ。お気に召さないようでしたら、他のものをご用意いたしますぅ」
「ええ、ありがとう。これで大丈夫よ」
リーゼロッテは微笑んで差し出されたドレスに袖を通していく。
「わぁ! リーゼロッテ様は、すぅごく綺麗な龍の祝福をお持ちなんですねぇ!」
胸の龍のあざを目にした侍女が着替えを手伝いながら、感嘆の声を上げた。
彼女はエラ付きの侍女として公爵家に雇われていたが、今日はエラもエマニュエルもいないため、リーゼロッテの世話係として配されていた。
「ふふ、コンテストで優勝できるかしら? でも、他ではそのような発言は控えたほうがいいわ、ベッティ」
リーゼロッテが困ったように微笑むと、侍女のベッティは大げさに口に手を当てた。
「ぃやだ! わたしってばまたやらかしちゃいましたぁ! お体について言及するなんて、超絶不敬ですよね? 懲罰ものですよね? ムチですか? 貼り付けですか? 縛り首ですかぁ?」
「ば、罰など与えないわ。これはあなたの今後のために言っているだけだから……」
「わぁ、さすがリーゼロッテ様はおやさしいですぅ! 羽虫のようなわたしの名前までご記憶くださってるなんて、このベッティ、今日はリーゼロッテ様に誠心誠意お仕えさせていただきますぅ。あ、髪も結わせていただいてよろしいですかぁ?」
(ベッティは、ちょっとかわった娘ね……)
三時間越えの晩餐を乗り越え、昨夜は疲れ切ってぐったりと眠ってしまった。そのおかげというべきか、夢も見ずにぐっすり眠れて、いつも以上に目覚めの良い朝を迎えたリーゼロッテだった。
しかし好調な体とは裏腹に、精神はダメージをくらったままだ。夕べは大勢の使用人たちが見守る中、繰り広げられたあーん攻撃に、最後の方は無心で咀嚼を繰り返した。
(どうせなら、もっと味を堪能したかった……)
遠い目をしてリーゼロッテは、侍女の手を借りて夜着を脱いだ。
「本日はこちらのドレスでよろしいですかぁ。お気に召さないようでしたら、他のものをご用意いたしますぅ」
「ええ、ありがとう。これで大丈夫よ」
リーゼロッテは微笑んで差し出されたドレスに袖を通していく。
「わぁ! リーゼロッテ様は、すぅごく綺麗な龍の祝福をお持ちなんですねぇ!」
胸の龍のあざを目にした侍女が着替えを手伝いながら、感嘆の声を上げた。
彼女はエラ付きの侍女として公爵家に雇われていたが、今日はエラもエマニュエルもいないため、リーゼロッテの世話係として配されていた。
「ふふ、コンテストで優勝できるかしら? でも、他ではそのような発言は控えたほうがいいわ、ベッティ」
リーゼロッテが困ったように微笑むと、侍女のベッティは大げさに口に手を当てた。
「ぃやだ! わたしってばまたやらかしちゃいましたぁ! お体について言及するなんて、超絶不敬ですよね? 懲罰ものですよね? ムチですか? 貼り付けですか? 縛り首ですかぁ?」
「ば、罰など与えないわ。これはあなたの今後のために言っているだけだから……」
「わぁ、さすがリーゼロッテ様はおやさしいですぅ! 羽虫のようなわたしの名前までご記憶くださってるなんて、このベッティ、今日はリーゼロッテ様に誠心誠意お仕えさせていただきますぅ。あ、髪も結わせていただいてよろしいですかぁ?」
(ベッティは、ちょっとかわった娘ね……)